企業が海外進出を行う目的は様々ですが、事前に行うステップとして、「海外現地視察」があります。

通常は、日本で調査をして、ある進出候補を絞り込んだ後で現地視察をします。

この現地視察は極めて重要です。

視察で間違ったその地域の理解をしてしまうと、会社規模によりますが、どんなに小さな規模でも、数百万円以上の損失が出てしまいます

ここでは、海外現地視察にあたり注意すべき5つのポイントと、その確認につかう便利な英語フレーズを3つ解説します。

この記事に書いてあることをしっかり理解して正しい現地視察ができるようにしましょう

海外現地視察の注意点[基本編]

海外現地視察の注意点は5つあります。

まずは基本編として2つお知らせします。

①事前に確認すべきことをリスト化する

海外現地視察時に、確認事項が分かっているようでわかっていない、というのが一番危険です。

何となく「こういうことを確認しよう」と頭の中でイメージするだけではなく、それを書き出してリスト化する必要があります。

このリストは、実際の現地視察時に「聞いたか、まだ聞いていないか」のチェックリストとしてそのまま利用できます。

また、このリストは英語で書いておく方が望ましいです

例えば、「ベトナム政府の企業に対する規制緩和の動向を確認」という日本語で書かれたメモがあっても、それをすぐに英語で伝えられなければなりません

よって、「Confirm Vietnamese government’s corporate deregulation trend」というように英語で書いておきましょう。

もし発音に自信がない場合は、英語で書いたリストを相手にそのまま見せて聞いてみるのも便利です。

このような場合も想定して、リストは紙に印刷して持っていくと便利です。

以上のようにしっかりと確認事項を英語でリスト化し紙に書いてしておきましょう

②話を聞くときに遠慮しない

聞きたいけれども聞きにくいことがあっても、決して遠慮して後回しにしてはいけません

例えば、海外進出支援企業に支援を依頼する際に「どこまでやってくれるのか、ここまでやってくれるならいくら支払いますが、やってくれないなら契約できません」といった契約ごとなどです。

袖の下を要求されるビジネス文化など相手の国の文化も良い例です。

 

このような聞きたいけど聞きにくいことは、大抵重要事項であることが多いです。

重要事項を確認しなかったために、進出後トラブルが発生すると、大きな損失や、ビジネスの遅延を招いてしまいます

損失を出さないようにするためにも、海外の現地視察の際には聞きにくいことでも遠慮せずその場で聞いて確認するようにしましょう

海外現地視察の注意点[応用編]

次に、海外現地視察のポイントを応用編として3つお知らせします。

③決めたライン以上に妥協しない

海外に行って外国人や現地に詳しい日本人などと話をすると、自分が持っている価値観は正しくないのではないか、現地に住む人がいうことが正しいのではないか、と意見が引っ張られてしまう場面があります。

こうなると、当初考えていた原則を曲げて、「進出条件は十分ではないが、まず進出しよう」という判断に流されそうになります。

しかし、条件が整わないうちに進出することは、失敗するリスクを高めることになります。

よって、「これ以上は妥協しない」と決めたライン以上には安易に妥協しないことがとても重要なのです。

逆に進出支援企業や、合弁先と交渉する場合には、条件を明らかに伝えたほうが良いです。

例えば、

  • Our condition of partnering with your company is to have majority share. (貴社と提携する上での条件は、当社が過半数の株を持つことです)

などと、最初から伝えてしまえば、交渉の時間が省けます。

④現地の国や文化、人を馬鹿にしない

特に発展途上国への進出は日本企業に多いです。

視察にきたはいいが、「日本だとXXXだけど、この国は遅れているからYYYしかできない」といったことや、「この国の人は働かない、能力が低い」といった批判ばかりする人がいます

もし、こうした話を、日本人の間同士で内々でしていたとしても、このような考えは必ず言葉や態度に出ます

そして、うっかり現地の人の前でも、「まったく、XXX人はこれだからだめだな」などと攻撃する内容を口走ってしまいます

進出する予定の国、文化、人は日本とは違います

仕事優先ではなく家庭優先が当然だったり、すぐに仕事を辞めてしまうこともあるかもしれません。

不合理と呼ばれる制度や慣習がたくさんあるかもしれません。

しかし、進出国で仕事をさせて頂く日本人として、敬意を払い、批判めいたことを言わない必要があるのです。

⑤自分が進出国を好きになれるかどうかを確認する

ある国に進出する際は、ビジネスとしてしっかり利益を生んでくれるかどうかもということももちろん重要です。

しかしそれ以上に重要なのが、この国でビジネスをしたいと個人的に思えるか、という点です。

特に経営者がそう感じられることが重要です。

「またこの国に来たい、この国の人と文化が好きだ」と思えれば、進出国で何とか頑張ってビジネスしようと心から思えます

逆に、嫌いな国で仕方なくビジネスするのは拷問のようなものですので、投資した金額を捨ててでも、さっさと撤退してしまいたい、という思いに駆られてしまいます。

「進出予定国を好きになれるかどうか」、この指標も忘れないでください。

 

しかし「自分はこの国を好きになれないが、ビジネス上どうしても進出する必要がある」という場合も十分ありえます。

その場合は「その国のことが好きな人を見つけて(または社内公募して)、その人を責任者にする」ほうがよいでしょう。

妥協はNG!確認事項を漏らさず理解する

現地視察中に、湧き上がってきた新たな疑問点なども、視察中にできるだけ多く疑問解消する必要があります

一度確認したことでも、ちゃんと理解できていないようであれば、何度でも確認しましょう。

知ったかぶりをせずに、正しく深く理解することが重要です。

ここでは、この際に使えるいくつかの便利な例文をあげますので、ぜひ活用してみてください。

  • I am not familier with taxation system of this country. Could you explain in details?
    (私はこの国の租税システムについてよく分かっていません。教えて頂けますか?)

疑問点について切り出すときに使います。

“I am not familier with …”という表現は、あまりぶしつけな表現でないため、ビジネスで好まれます。

何か疑問点があったら、この例文を使って聞いてみましょう。

  • Could you send a detaield document and quotation?
    (詳細の資料と見積を送ってもらえますか?)

視察で色々な会社を訪問する中で、時間切れになるケースもあります。

現地企業から提案を受けている場合、資料や見積もりを送ってもらい、後で検討すると伝えましょう。

  • If available, let’s have a skype call after going back to Japan.
    (もし可能であれば、日本に戻ってからスカイプ会議しましょう)

時間切れになってしまったが、書類のやりとりだけでなく、より突っ込んで話したいときに使いましょう。

Skypeであればお互い費用がかかりません。

まとめ

以上が、海外の現地視察の際に気をつけるべき5つのポイントとその時に使える便利な英語フレーズです。

有名な格言に「悲観的に準備し、楽観的に行動する」というものがありますが、これはまさに海外進出にそのまま当てはまります。

海外進出は、大きなビジネスチャンスがある反面、リスクもあります。

問題が起こったときに、「そんなことをは想定していなかった」と右往左往していてはダメです。

「想定していたリスクが来たな。この問題の対応策は既に準備済みだから大丈夫」と、動じずにいられるように海外の現地視察でリスクの洗い出しをしっかり行いましょう