2016年は「神ってる」という言葉が流行語大賞を受賞しました。
もちろん辞書に載っていない言葉でありながらも、「神がかりな」という意味であろうことは、日本語が分かる人なら誰でも理解出来ることでしょう。
原型が「神る」、過去形が「神った」となるであろうことも分かります。
このように名詞から新たな動詞が作られるという現象は、英語でもたくさん見られます。
一時の流行で終わるものもあれば、もはや気付かないほど自然な英語として定着してしまっているものもあります。
このように、名詞が動詞化した英語表現について今回は解説していきます。
もくじ
名詞の動詞化、英語で何ていう?
動詞のことを英語でverbと呼びます。
名詞を動詞化することを「verbification」または「verbing」といいます。
- A lot of nouns are verbified.(多くの名詞が動詞化されています。)
- Verbification enlivens the language.(名詞を動詞化した表現を使うことで、言語は面白くなります。)
- Examples of verbification we don’t know.(私たちが知らない名詞動詞化の例。)
日本語だけじゃなかった!面白い名詞の動詞化
日本語でも「名詞+する」で動詞にしてしまった言葉がたくさんありますね。
メモ+する「メモる」、ミステイク+する「ミスる」、サボタージュ+する「サボる」など、動詞化で生まれた新語はいくつでも挙げられそうです。
最近では、グーグル検索することを「ググる」なんて言い方も広がっていますが、これは英語でいうと「Google it!」です。
英語でも、Googleという会社・サービスの名前が動詞になっているのです。
- If you don’t know what it is, just google it.(もし、それが何か分からなかったらグーグルで検索しなさい。)
もちろん、動詞化しているのですから、語尾に「ed」を付けた過去形や「ing」を付けた現在形も存在します。
- You can google but you can’t copy what you googled.(ググってもいいけど、それをそのままコピーするのはいけませんよ。)
このような例は他にもたくさんあります。
フェイスブックの登場は、いくつかの新しい言葉を生みました。
フェイスブックを見たり投稿したりすることを「facebooking」、フェイスブックユーザーは「facebooker」です。
- Do you facebook?(フェイスブック使っていますか?)
- You are faceboking all day.(君は一日中フェイスブックをしているね。)
- Friend her(彼女とフェイスブック友達になる。)
- Unfriend her(彼女とフェイスブック友達をやめる。)
世界中の人々が、日常の様々な事柄を「つぶやく」場所・ツイッター(Twitter)も例外ではありません。
そもそも「twitter」とは鳥のさえずりを意味する単語ですが、今ではウェブ上にさえずりが蔓延しています。
- I’m twittering about the thing I just witnessed.(今、目の前で見たことについてツイッターに投稿しているところです。)
- We tweet some times.(私たちは時々ツイッターに投稿します。)
そしてスカイプ、Youtubeも動詞にすることが出来ます。
- Let’s plan to skype tomorrow at 9 pm Japan time.(明日の日本時間夜9時に、スカイプしよう。)
- We can skype to keep in touch.(スカイプで連絡を取り合えますね。)
動詞には不規則変化をするものがありますが、名詞を動詞化して作られた新語に不規則変化は無く、どれも必ず規則変化になるという特徴があります。
三人称で使うときも基本ルール通りSを付けてください。
- He youtubes all day every day.(彼は、毎日朝から晩までYouTube三昧です。)
電子メールの台頭で最近では以前ほど存在感がありませんが、ファックスも動詞化しています。
- Please fax the documents to the client.(クライアントに書類をファックスで送信してください。)
- We will fax you.(ファックスで送ります。)
「コピーを取る」というとき、本来なら「photocopy(写真複写)」という単語を使うべきところですが、コピー機の主要メーカーXerox(ゼロックス)も動詞として使われてきました。
- Give me some photocopies.(何枚かコピーを送ってください。)
- Can you Xerox these for me?(コピーしてもらえますか?)
電話(telephone / phone)も、もちろん動詞になっています。
例えば、「電話して」というとき「Call me」ということが多いですが、「Telephone me」「Phone me」ということも出来ます。
名詞の動詞化は技術分野、今日では特にインターネット関連の分野で顕著で、以下のような例があります。
- Email me about your schedule.(メールでスケジュールを送ってください。)
- I will text you later.(後でテキスト(メッセージ)で送ります。)
家庭にも動詞化名詞は溢れています。
電子レンジのことを英語で「microwave」または「microwave oven」といいますが、これを動詞として使えば「電子レンジで温める」の意味になります。
- Microwave my lunch.(ランチを温める。)
- Microwave the frozen meat for 15 minutes.(冷凍肉を15分、電子レンジにかける。)
「vacuum cleaner(掃除機)」も、「vacuum」するといえば「掃除機をかける」ということです。
- Can you vacuum my room too?(私の部屋も掃除機をかけてもらえますか?)
- Just vacuumed my room.(私の部屋は、ちょうど掃除機をかけ終えたところです。)
名詞の動詞化、本来のルール
以上のように気ままに新しい動詞が作られていますが、文法の基本ルールでは、動詞の最後に「ate、en、ize」などの接尾辞(suffix)をつけることで名詞の動詞化を行います。
「priority(プライオリティ、優先順位)」という名詞の語尾に「ize」を付けると「prioritize(優先する)」です。
- You should prioritize the task.(作業には優先順位を付けないとダメだよ。)
花粉のことを「pollen」といいますが、「ate」を付けると「pollinate(受粉する)」という動詞になります。
そして、受粉という言葉は「pollinate」を名詞化した「pollination」です。
「length」とは長さのことですが、「en」を付けて「lengthen」とすると「長引かせる」です。
- Should I lengthen my stay?(滞在を延長すべきだろうか?)
「notice(通知)」は「notify(通知する)」ですね。
「chair(椅子)」という単語がどんな動詞になり得るのか想像が付くでしょうか?
議長や委員長などの役を務めることを「chair」というのです。
- I will chair the meeting / committee next time.(次は私が会議の/委員会の司会を務めましょう。)
その役職のことを「chairperson(議長、委員長)」といいます。
かつてはchairmanという言葉がよく使われていましたが、最近では男性を示唆する「man」という言葉から、性別を問わない表現「person」に変わっています。
名詞がそのまま動詞になった例
実は、英語には名詞がそのまま動詞にもなっている例というのもたくさんあります。
例えば誰もが知っている英単語「fish(魚)」は、魚を釣る/獲るという意味の動詞でもあります。
- Let’s go fishing.(魚釣りに行きましょう。)
「milk(牛乳)」は動詞では「乳搾りをする」の意味ですが、さらに広がって「搾り取る/搾取する」という意味まであります。
- The new taxation is the system of milking people’s hard-earned money.(新しい税制は、人々が苦労して稼いだお金を搾り取る仕組みです。)
「ice(氷、凍らせる)」
- The river get iced during the winter.(この川は冬の間、凍結します。)
「ship(船、輸送する)」
輸送するという意味です。ship(船)だからといって、船便とは限らないのが面白いところです。
- When did you ship my parcel?(私の荷物はいつ発送してくれましたか?)
- shipping date(発送日)
- shipping cost / charge / fee(発送料)
「water(水、水をやる)」
- Please water my plants every day while I’m out.(私の留守中、毎日植物に水をやってください。)
「rain(雨、雨が降る)」
動詞「雨が降る」の主語は「It」にします。
- It’s raining.(雨が降っています。)
- It always rain this time of the year.(毎年この時期はいつも雨です。)
「champion(チャンピオン)」という言葉は、きっと誰もが知っているのではないでしょうか。
勝者という意味ですよね。けれども、こんな単語さえ動詞として使うことが出来るのです。
動詞としてのchampionは「守る、擁護する」という意味です。
- The NGO was established to champion the underprivileged people.(そのNGOは、社会的に恵まれない人々をサポートするために設立されました。)
「privilege」とは特権の意味です。underを付けて「underprivileged」とすると、謳歌すべき権利に恵まれないという意味になります。
「pepper(コショウ、コショウを振る)」
代表的なスパイス・コショウ。これも動詞として使えば、「コショウをふりかける」という意味になります。
- I need to pepper my steak a little more.(もう少しステーキにコショウを振り掛けたいな。)
同じく「salt(塩)」を動詞として使えば、「塩を振り掛ける」または「塩漬けにする」という意味になります。
- Salt the salad.(サラダに塩を振り掛ける。)
- Salt the remained fish.(残った魚を塩漬けにする。)
まとめ
名詞を自在に動詞化してしまう現象、どこの言語でも同じだなと思われたのではないでしょうか。
会話をしていて英語で何ていうか分からないとき、このような「名詞を動詞にするテクニック」を試してみるとかえって簡単に通じることもあるものです。
悩んで黙ってしまうよりは、臨機応変に口にしてみてはいかがでしょう?
日々新たに作られ続ける新語、出来たての英単語を探してみるのも楽しいのでは?
投稿者プロフィール
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2012年より東アフリカの英語圏の国・タンザニア在住。英語は貿易業務、国際機関勤務などにおいて、実務で身に付けた叩き上げ。
現在はフリーライターとして、日本語および英語による記事を執筆している。
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