人名を使ったイディオムというのがあります。
日本語のイディオムだと、出てくる名前は「権兵衛(名無しの権兵衛)」や「釈迦(お釈迦になる)」、「弁慶(弁慶の泣き所)」など、あいにく現在ではあまり見られない名前ばかりです。
一方、英語のイディオムには、現在でも一般的な名前がたくさん出てきます。
知らないと、会話の時に知らない人の名前が出てきたと混乱してしまうこともあります。
逆に会話にこのようなイディオムを混ぜることができると、一気に英会話上級者になることができます。
この記事ではそんな人の名前が登場する面白いイディオムを23個紹介します。
もくじ
- 1 Dear John letter
- 2 John Doe / Jane Doe
- 3 Mary Jane
- 4 By George
- 5 Let George do it.
- 6 doubting Thomas
- 7 Annie Oakley
- 8 Uncle Sam / John Bullその他
- 9 Uncle Tom
- 10 Tom, Dick, or Harry
- 11 Peeping Tom
- 12 Peter Pan syndrome
- 13 Rob Peter to Pay Paul
- 14 Hobson’s choice
- 15 and Bob’s your uncle
- 16 Johnny-come-lately / Johnny-on-the-spot
- 17 Keep up with the Joneses
- 18 John Hancock
- 19 Adam’s Apple
- 20 live / lead the life of Riley
- 21 Jack of all trades / Jill of all trades
- 22 Rip van Winkle
- 23 Benjamin / Benjamin of the family
- 24 Mickey Mouse
- 25 Take the Mickey
- 26 まとめ
Dear John letter
「別れを告げる手紙」
男性「ジョン」に宛てて書かれる手紙の内容は、女性から男性に伝える別れの手紙です。
現代では、「手紙」は郵送とは限りません。
メールやメッセージからも来る可能性があるのです。
- I received a dear John letter from my girlfriend by email.(彼女からメールで別れの手紙をもらいました。)
男性から女性へ送る逆バージョンは「Dear Jane letter」と呼ばれます。
John Doe / Jane Doe
「匿名男性/匿名女性」
身元を明かせない男性を指すときに使われる便宜的な名前です。
女性の場合は「Jane Doe」となります。
子供の場合だと、男児は「Johnny Doe」、女児は「Janie Doe」になります。
Mary Jane
「マリファナ/ストラップシューズ」
この女性の名前、実は「マリファナ(marijuana)」を指します。
けれども、マリファナだけとは限りません。
女性や子供がはくストラップの付いた靴もこの名前で呼ばれます。
また、「飾り気のない素朴な若い女性」もこの名前で形容されます。
By George
英語で「何てこった!」というにはこういう言い方もあるのです。
Let George do it.
「他の誰かにやらせよう」
人に何かの作業を押し付けるときは、「ジョージにやらせよう」という言い方をするのです。
- I’m busy. Can you let George do it?(忙しいので、他の誰かに頼んでもらえませんか?)
doubting Thomas
「疑り深い人」
何でも自分の目で確かめないと気がすまない人をこのように呼びます。
トマス(Thomas)とは、イエスキリストの復活を自分の目で見るまで信じなかった12人の使徒の一人です。
- Sorry, I’m really being a doubting Thomas about this issue.(悪いけど、この件について私は本当に疑り深くなっています。)
Annie Oakley
「無料チケット」
アニー・オークレイ(1860~1926)は、アメリカの射撃の女性名手です。
映画やブロードウェイミュージカルにもなっている『アニーよ銃を取れ(Annie Get Your Gun)』は、彼女を題材にしたものです。
彼女が銃で打ち抜いた穴だらけのトランプカードが、はさみを入れた劇場チケットと同じように見えることから、「劇場の無料チケット」の意味が発生しました。
- I got a pair of Annie Oakley!(無料ペアチケットを入手しました!)
Uncle Sam / John Bullその他
「アメリカ政府」
Uncle Samの頭文字は「US(アメリカ)」なのです。
アメリカ政府、引いてはアメリカ人をも指します。
他にアメリカの一般庶民を指す「John Q Public」という言葉もあります。
このようにモノを人物に例えることを「personification(擬人化、人格化)」と呼びます。
「John Bull」は「典型的なイギリス人またはイギリス男性」を指す言葉です。
カナダ人をさす言葉は「Johnny Canuck」、フランス共和国を象徴するのは女性「Marianne」です。
Uncle Tom
「白人に従順な黒人」
アメリカの女流作家 ・ストウ婦人(H. B. Stowe)の小説 『Uncle Tom’s Cabin(アンクルトムの小屋) 』の主人公の黒人の名前です。
作品中のトムの態度から、このような意味を持つようになりました。
Tom, Dick, or Harry
「誰でも彼でも」
「よくある男性の名前」を集めたこの表現ですが、使う対象は男性に限りません。
男女混合の場合でも使えます。
- Any Tom, Dick or Harry will be fine.(もう誰でもいいです。)
Peeping Tom
「覗き屋」
Tomの名前はこんなところにも登場します。
人の目を盗んで覗き見をする人を指す言葉です。
Peter Pan syndrome
「ピーターパン症候群」
「イディオム」とは少し違いますが、これもご紹介してみましょう。
大人になることを拒む人に見られる傾向をこのようにいいます。
「体は大人、心は子供」の状態です。
スコットランドの作家バリーの戯曲『ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年(Peter Pan; or, the Boy Who Wouldn’t Grow Up)』が由来です。
- I assume he has some signs of Peter Pan Syndrome.(彼には、ピーターパン症候群の兆候があるように思われる。)
Rob Peter to Pay Paul
「ピーターから盗み、ポールに払う」
片方から借りてもう片方に支払う、つまりクレジットカードの請求書をキャッシングして払うような状況を指します。
- Robbing Peter to pay Paul only makes the matter worse.(借金を借金で返すなんて、事態を悪くするばかりですよ。)
Hobson’s choice
「実際には選択肢のない選択」
貸し馬屋のThomas Hobsonが顧客に馬を貸すにあたり、好きな馬を選ぶことを許さなかったことから来ているフレーズです。
- The choice he gave me was actually a Hobson’s choice.(彼が与えてくれた選択肢は実際のところ、選ぶ余地のないものでした。)
ウィリアム・スタイロン原作、メリル・ストリープ主演で撮られた1982年のアメリカ映画「Sophie’s Choice (ソフィーの選択)」というのもありました。
こちらは、「究極の選択」といったところでしょうか。
ナチの強制収容所で二人の幼子のうちどちらを連れていくか選ぶ選択を迫られたものです。
アカデミー賞も受賞した見応えある作品でした。
and Bob’s your uncle
「簡単でしょ!」
イギリス英語の表現です。
- Ingredients are all measured, washed and cut, and Bob’s your uncle!(材料はどれも計ってあるし、洗って切ってもあるんだから、簡単でしょ!)
Johnny-come-lately / Johnny-on-the-spot
「新人」「タイミングのよい人」
文字通りの意味では「最近やってきたジョニー」となります。
newcomerや novice(新人、新米)の意味です。
そして「Johnny-on-the-spot」のフレーズの方は、「必要とされるときにちょうど居合わせる人、タイミングを逃さない人」という意味です。
「on the spot」は「その現場で」という意味です。
- I had to pay on the spot.(その場で支払わなければならなかった。)
Keep up with the Joneses
「見栄を張る」
語源は、1913年から1940年までの長期に渡って続いたコマ割り漫画のタイトル「Keeping up with the Joneses」からきています。
ニューヨークの高級住宅地を舞台に近隣住人と見栄を張り合うストーリーから発生したフレーズです。
- I’m not going to keep up with the Joneses.(私は見栄を張って暮らすつもりはありません。)
John Hancock
「署名」
「Signature」と同じ意味で使えます。
アメリカの独立宣言(the Declaration of Independence)の署名をした人物の中で彼の署名が一番大きかったことから、彼の名前=署名の代名詞となりました。
- I need your John Hancock here.(ここにあなたのサインが必要です。)
Adam’s Apple
「のどぼとけ」
旧約聖書の中で、妻のイヴ(Eve)と共に神に作られた最初の人間とされている「アダム」はヘブライ語由来の名前で、キリスト教徒以外にもユダヤ教徒、イスラム教徒にもみられる名前です。
アダムが禁断の実とされていたリンゴを食べたときに、そのかけらが喉にひっかかったことがこのフレーズの元になっています。
live / lead the life of Riley
「安楽な暮らしを送る」
あくせく働く必要もなければ、たいした問題も心配もなく暮らせるという意味です。
- You are seemingly living the life of Riley. What can you ever complain about?(安楽な暮らしを送っていると思われる君に、一体どんな不平があるというんだい?)
Jack of all trades / Jill of all trades
「何でも屋」
男性の何でも屋はJack、女性ならJillになります。
いろいろなことが出来る「多芸な人」の意味ですが、後ろに「master of none(どれもマスターはしていない)」を付けてJack / Jill of all trades, master of noneとすると、「いろいろ出来るけど、どれも中途半端」という意味になります。
ちなみにJackのパートナーはいつでもJillなのです。
「every Jack has his Jill(誰でもいつかふさわしい女性に出会うものだ)」というフレーズもあります。
そしてついに出会った相手と良い関係を築くコツは「a good Jack makes a good Jill(妻を大事にすれば、自分も妻から大事にしてもらえる)」です。
Rip van Winkle
「浦島太郎」
英語の世界にも浦島太郎がいたのです。
19世紀のアメリカの小説に出てくる主人公・怠け者の「Rip van Winkle」は20年間眠ってしまい、目覚めたときには世の中がすっかり変わっていたという話から来ています。
アメリカ英語で「流行に疎(うと)い人」や「寝てばかりいる人」を意味するのに使われるようになりました。
Benjamin / Benjamin of the family
「100米ドル紙幣」「末っ子」
アメリカの100ドル札にBenjamin Franklinが印刷されていることから、「Benjamin」といえば100ドル紙幣を指します。
- When will you refund my Benjamin?(貸した100ドルは、いつ返してくれるの?)
ヘブライ語から来ている「Benjamin」の名前には、「末っ子」の意味もあります。
「Benjamin of the family」といえば一家の一番下の息子、特に他の兄弟姉妹から年の離れた息子のイメージです。
Mickey Mouse
「重要でない、単純な」
世界中で揺るがぬ人気のキャラクター「ミッキーマウス」。
その名前にはこんな使われ方があったのです。
もちろん、語源はディズニーのミッキーマウスから来ています。
- It’s a mickey mouse task.(簡単な作業だよ。)
Take the Mickey
「寄ってたかって誰かを笑いものにすること」
イギリス英語のスラングです。
MickeyはMickと言い換えられることもあります。
こちらのMickeyはミッキーマウスとは関係ありません。
コックニー英語(ロンドン東部地区で話されている英語)のスラングから来ている言葉です。
- Stop taking the mickey out of that guy.(あの人をからかうのは止めなさいよ。)
まとめ
以上が、知っていないと混乱してしまう英語の人名を使った23個のイディオムです。
人の名前が使われていると、英語のフレーズでも親近感を感じます。
聞き慣れた名前が多いので、覚えやすくもあるのではないでしょうか。
さりげなく会話に混ぜて使ってみたら楽しくなりますよ!
投稿者プロフィール
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2012年より東アフリカの英語圏の国・タンザニア在住。英語は貿易業務、国際機関勤務などにおいて、実務で身に付けた叩き上げ。
現在はフリーライターとして、日本語および英語による記事を執筆している。
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