普段私たちがよく使う定型表現の一つに「取り急ぎ」や「とりあえず」というのがあります。
これらをどのように英語で表現するのか、海外ビジネスをする人であれば一度は迷ったことがあるでしょう。
正直「取り急ぎ」や「とりあえず」にあたる英語表現はありません。
しかし、このようなニュアンスを伝える英語表現であれば存在します。
英語ではどんな表現が可能なのか、この記事では、「取り急ぎ」あるいは「取りあえず」として使える英語表現を探っていきます!
もくじ
取り急ぎ・取りあえず
「取り急ぎ」や「取りあえず」というのは、「最終ではなく暫定的、一時的な」という意味があります。
次に挙げるのは、どれもそのような意味・ニュアンスを持つ表現です。
temporarily(一時的に)
- We will appoint him as an inspector temporarily.(取りあえず今のところは、彼を検査員に任命しよう。)
- All the cables were temporarily disconnected.(取りあえず、ケーブルはすべて取り外された。)
tentative(暫定的な)
- The above schedule is tentative. The announcement will follow once fixed.(上記の日付は取りあえずの日程です。最終的に決まり次第ご連絡します。)
- My holiday is still tentative.(私の休暇はまだ取りあえずの日程です。)
for the moment(さしあたり、今のところ)
- What can be the best solution for the moment?(取りあえずは、何が最善策だろうか?)
- We can’t comment anything for the moment.(取りあえず今は何もコメント出来ません。)
for the time being(さしあたり、今のところ)
- We can handle the issue by ourselves for the time being.(取りあえずは自分たちで何とか出来ます。)
「TBD」という略語は「To Be Determined」あるいは「To Be Decided」の頭文字を取ったもので、「未定、決まり次第連絡」といった意味の表現です。
似たものに「TBC」(To Be Confirmed)というのもあります。
これらも「取り急ぎの連絡」のときに利用することが出来ます。
- Save the date: Farewell to Ms ○○ on 1st September
Time and place: TBD
(9月1日は○○さんの送別会なので、取り急ぎ空けておいて下さい。時間と場所は決まり次第連絡します。)
「Save the date」とは、イベントごとを知らせるときに「その日は他の予定を入れず空けておいて下さい」と呼び掛けるフレーズです。
取り急ぎお知らせします
人と何かを作業するときは、結果報告だけでなく経過報告・進捗連絡も欲しいところです。
ビジネスマナーとしては、なおさら心がけたいです。
状況などを「取り急ぎお知らせします」といった場面なら「I’d like to let you know that ~」や「This is to inform you that ~」などを使います。
- I’d like to let you know that the client was not willing to take our proposal.(クライアントは当方の提案にはあまり乗り気でない旨、取り急ぎ報告します。)
- This is to inform you that we are still waiting for their response.(まだ先方の反応を待っている状態である旨、取り急ぎご報告まで。)
メールなどの文書で連絡する場合は「I’m writing to let you know that ~」とすることも出来ます。
「~について報告するために、取り急ぎ書いている」といった感じが出せます。
- I’m writing to let you know that the schedule has to be changed.(スケジュールは変更せざるを得ない旨、取り急ぎご連絡します。)
- I’m writing to inform you that the documents will be ready by Monday, according to their secretary.(先方の秘書によると、書類は月曜までに出来上がる予定との旨、取り急ぎご連絡します。)
「This is a quick note / update on ○○」といったフレーズでも「取り急ぎ」の表現が出来ます。
「a quick note」は「取り急ぎのお知らせ」、「a quick update」なら「取り急ぎの進捗報告」といったニュアンスです。
- This is a quick note on the current situation.(現況につき、取り急ぎお知らせまで。)
- This is just a quick update on the issue.(本件につき、取り急ぎご報告まで。)
すでにお知らせ済みだったり依頼済みのことを、もう一度リマインドしたり催促しようとするときも「取り急ぎ」のニュアンスを使うことがあります。
相手にはすでに一度伝えてあることなので、「取り急ぎリマインドまで」といった感じでサラッと連絡、あるいは催促する場合です。
このようなときは、「This is to remind you that ~」や「I’d like to remind you that ~」を使って表現出来ます。
- This is to remind you that the we are having a guest tomorrow at 10.(明日10時に来客の旨、取り急ぎリマインドまで。)
- I’d like to remind all of you that we are departing tomorrow at 8 morning.(明日は8時に出発の旨、取り急ぎ皆さんにリマインドまで。)
- This is to remind you that the due date is Monday.(支払い期日は月曜の旨、念のためお知らせします。)
「a gentle reminder」や「a friendly reminder」という言葉が使われることもあります。
「reminder(リマインド)」に、「gentle」や「friendly」という言葉を付けることで響きを柔らかくする効果を狙った表現です。
しかしながら、柔らかい言葉を使っていても意図は変わりません。
当たりを良くしただけの言い回しをまどろっこしいと感じ、ただの「remind」だけの方がストレートで好感が持てると考える人もいるようです。
- This is just a gentle reminder that the deadline is tomorrow 12 noon.(締め切りは明日正午である旨、念のためリマインドまで。)
- This is a friendly reminder that we are still waiting for the invoice.(請求書がまだ未着である旨、取り急ぎご連絡いたします。)
調べて折り返します
「まだ返事は出来ないけれど、検討するなどして早急に折り返します」のように、取り急ぎ返信だけはしておくというシチュエーションもあります。
そのような「取り急ぎの連絡」は、次のように表現出来ます。
- I will get back to you as soon as possible.(出来るだけ早くご連絡します。)
この文章をカジュアルな文体で書くと、次のように表せます。
- Will get back to you ASAP.
「ASAP」は「As Soon As Possible」の頭文字を取った表記で「出来るだけ早く、早急に」という意味になります。
主語の「I」も省かれてしまっています。
書類など相手から何かを受け取ったとき、中身の確認はまだだけど取りあえず受け取ったことだけは連絡する場合は、次のようなフレーズで一報しましょう。
無事届いたのだなと、送った人に安心してもらえます。
- Thanks for the document. I will check and get back to you.(書類ありがとうございました。確認して折り返します。)
- We will discuss and get back to you shortly.(社内で検討して折り返します。)
「We(私たち)」にすることで「社内で、当社で」という意味を表すことが出来ます。
「shortly」は「すぐに」「まもなく」の意味です。
まとめ
以上が、直訳が存在しない「取り急ぎ」や「とりあえず」を表す英語表現です。
「取り急ぎ」や「取りあえず」の直訳を考えても思い浮かばないものですが、状況別に考えてみると、いろいろと当てはまる表現方法を見付けることが出来たりします。
言葉のニュアンスというのは、額面通りに文字を理解するだけでは分からないものがあるので、実際に使われている英語の中で感覚的に捉えていくのがベストです。
使い慣れない言葉や表現でも、勇気を出してどんどん使ってみましょう。
相手の反応を見ることで、それがどのようなニュアンスを持っているのかが分かってきます。
時には失敗したとしても、最終的にはそれが成功への近道になるでしょう。
投稿者プロフィール
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2012年より東アフリカの英語圏の国・タンザニア在住。英語は貿易業務、国際機関勤務などにおいて、実務で身に付けた叩き上げ。
現在はフリーライターとして、日本語および英語による記事を執筆している。
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