海外企業との合弁、海外企業の買収、また自身が海外に赴任するなどで、日本人が上司として外国人の部下を持つケースが急増しています

日本人が、日本人の部下を持つこともそれなりに大変なことですが、これが外国人の部下となると考え方や文化が異なるため、日本人以上に気を付けなければならない点が多いと言えます。

もし、対応を間違えてしまうと、最悪「日本人、日本企業が横暴だ」と大きな混乱を招いてしまう場合があります。

 

しかし、いきなり外国人の部下ができてもどのように対応していいかわからない人が多いです。

そこでこの記事では、外国人の部下を持つ日本人が、何に気を付ければよいか、どうすれば部下と良い関係を築いて円滑にビジネスを進められるようになるか、3つのポイントをお伝えします。

ここに書いてあることを守れば外国人の部下と良好な関係を築くことができます

是非参考にしてください。

部下の国と文化に敬意を払う

30代、40代の方はほとんど問題ないのですが、50代以上の方がよくやらかしてしまう失敗が以下のようなことです。

「まったく、XXX人はちゃんと働かない」「XXXの国は勤勉という文化がない」など、国や文化を一律に「ダメだ」と言ってしまうケースです。(特に日本から海外に駐在になった方)。

 

日本の本社が現地のことを正しく理解してくれないストレスのことを、現地ではOKYと呼ばれています。

「O(おまえが)、K(来て)、Y(やってみろ)」の略です。

現地駐在員にとっては、現地の事情を理解しない日本本社から日々「何故できないんだ」と詰められて、事情を説明するも、さっぱり通じている気がしない、なんてことがよくあります。

そしてストレスだけが溜まっていくのです。そして、このようなストレスが、「自分は正しくやろうとしているのに、うまくいかないのは現地スタッフのせいだ」という考えになり、現地スタッフの国や文化を攻撃するというパターンです。

 

部下の国や文化を攻撃するのは、最もやってはいけないことの一つです。

もしあなたが外国企業に入社して、外国人の上司から

「全く日本人はまともに働かない怠け者ばかりだ。些末なことばかり気にして重要なことに取り組まない。本当にダメだな」

と言われたら、どのように感じるでしょうか。

悲しい気持ちになったり、苛立ちを感じたり、「こんな上司にはついていけない」と思うのではないでしょうか。

あなたの部下になった外国人の国と文化を攻撃するのは、これと同じことです。

 

正しい対応は、「国と文化」と「仕事」をきちんと分けて対応することです。

そして、相手の国や文化の尊敬できる点を見つけて、それに敬意を払う、褒めることです。

たとえば、以下のように相手の国や文化を褒めると部下との信頼関係が深まりますよ。

I do respect Chinese culture and history. In Japan, “three kingdom” story is very popular, not only elder people but also younger people love it.
(私は中国の文化をとても尊敬しています。日本では「三国志」はとても人気があります。年配の方だけではなく、若い人にも愛されています。)
I believe American powerful culture comes from diversity. Many immigrants launched strong businesses from scratch. I admire your country’s culture.
(アメリカの力強い文化は多様性から来ていると思います。多くの移民がゼロから力強いビジネスを立ち上げています。あなたの国の文化に敬意を表します)

数字で会話をして一緒に考える

 

部下の「国と文化」と「仕事」を分けて話すのがとても重要ですが、「仕事」での共通言語は「数字」になります。

数字でしっかり管理する文化に慣れていない企業であればあるほど、「主観的な思い込み」「日本ではこのようにやっている」「もう少ししっかりしてほしい」といった漠然とした話を部下に対してしてしまいがちです。

伝えるべきは、

「目標値が100だが、現在はカ月を終えて10しか達成していない。あと月で90をどのように達成するのか、教えて欲しい」

というように、全てを数字で基づいた具体的な会話にすることです。

 

また、もし目標に対して大幅に未達だったとしても、怒ったり、問い詰めたりするのではなく、あくまで

「君はどのように考えているか、どのように対策しようとしているか、すでに行った対策は何か、教えて欲しい」

と聞いて、一緒に考える姿勢を見せることです。

英語だと、このようなフレーズになります。

We agreed 5M USD as fiscal year 2017 sales target.
(私とあなたで、会計年度の2017年に500万ドルの売り上げを上げると合意しましたね)
I do understand you work very hard for improving sales figure.
(君が売上数字を上げるために一生懸命頑張っていることはよく知っています)
But, at the end of 1st quarter, your sales amount is 500K USD, 10% of yearly target.
(しかし、第一四半期の終わりで売上は50万ドル、年間売り上げ目標の10%です)
For achieving your target by 2017 end, we need to think about how to move forward your sales.
(2017年度の目標に到達するには、どのように売り上げを早めるか考える必要があります)
I am here to support you.
(私はあなたをサポートするためにここにいます)
So please let me share your thought and plan to achieve yearly target. Then have a discussion.
(なので、目標に到達するための考えと計画を聞かせてください。そして議論しましょう)

日本では、まだまだ「目標に到達していない人をつるし上げる文化」がある企業がありますが、多くの外国人からすると、大勢の前でのつるし上げほど屈辱的なことはありません。

私が直接知っている例を1つお伝えします。

 

日本の大手企業に勤める上司が営業会議で、成績が未達の外国人営業担当をつるし上げでひどい罵声を浴びせました。

最初の数分はその外国人は話を聞いていましたが、その後机に自分の携帯を叩きつけて、そのまま退社してしまいました。

そして、本社のコンプライアンス担当に対して、上司からどのような仕打ちを受けたかをメールしただけでなく、その会社で働く外国人社員の多くに同様のメールを送っていました。

このような事態になって、上司は「外国人の部下をいじめ抜いたひどい日本人上司」という評判が立ってしまい、結果重要なポジションから外されてしまいました

 

決して、感情的にならずに具体的な数字に基づいたやりとりを部下としましょう。

そして、もし目標に達していない部下がいてもひどい仕打ちをするのではなく一緒にどうしたら目標に達成できるか考えて手助けしてあげる姿勢を見せましょう。

合意したことを記録する

大手企業であれば、「社員が目標を入力し、それに対して上司が承認する」目標管理システムがあることが多いです。

しかし、細かな短期的な目標については、メールなどで別に記録するのがよいでしょう。

打ち合わせが終了したら、部下に対して「今日合意したアイテムについて、期日を入れてメールしてください」と伝えて、メールさせるようにしましょう。

英語で使えるフレーズとしては以下のようになります。

Can you list up today’s items which we’ve agreed and send it back to me by email?
(今日合意したアイテムをリストアップして、メールで送ってくれますか?)

話したことを、お互いが合意したという形で記録するのはとても重要です。

日本人同士では、「阿吽の呼吸」だったり「以心伝心」だったり、「そこまで話さなくても、記録しなくても通じ合っている」感覚があるかと思います。

しかし、文化的背景が違う部下と一緒に仕事をするときは、「記録されているものだけが全てだ」と考えておいたほうがよいです。

「口頭で伝えたからOK」ではなくて、「文字の形になってはじめてOK」なのです。

まとめ

以上が、外国人の部下を持った時に絶対に気をつけるべき3つのポイントです。

誤解を恐れずに言うと、外国人の部下を持つことは「面倒くさい」ことなのは間違いありません。

しかしながら、多くの多国籍企業の強みは、「様々なバックグラウンドを持つ社員を、一律の基準に基づいて管理して、企業を運営すること」なのです。

「面倒くさい、嫌だ」ではなく、「面倒くさいが、上司であるなら最優先で取り組まなければいけないこと」です。

 

そして、この苦労というのは必ず報われます。

外国人の部下の管理経験があることは、自社の中で高く評価されます

「外国人の部下をきちんと管理して目標を到達させた経験がある」という経歴は、人事評価データベースにしっかりと記録され、昇進や異動の際に有利な情報になります

 

さらに、転職市場においてはさらに「外国人の部下の管理経験がある」ことは、それだけで給料が100万円、200万円あがる経歴になります。

「部下の管理経験がある」だけでも、転職市場では「高く売れる人材」になりますが、これが「外国人の部下も管理したことがある」になると、もう一段「評価額」が上がるのです。

 

このように外国人の部下しっかりと信頼関係を築くことで得られる経験値は非常に大きいです。

ここで解説した3つのポイントをしっかりと守って外国人の部下と接してみましょう