場所が違えばマナーも変わります。
まして、国や文化が違えば同じ人間とていろいろな違いが見つかることでしょう。
今回は、インド洋に面した国東アフリカの国、筆者の住むタンザニアのマナーと習慣をご紹介します。
さて、どんな相違と類似が見つかるでしょうか。
もくじ
挨拶は大事
日本では基本的に知らない人と挨拶する習慣はありません。
また、それどころか、最近では近所の人でも挨拶しない、目を合わさないようにしているという人さえいるほどです。
一方、タンザニアでは挨拶はとても重要なものと考えられており、道を歩いていると、知らない人からでもすれ違いざまに挨拶されるというのはよくあることです。
特に、年下の者は年上の人に率先して挨拶すべきであるとされています。
知らない人とも挨拶を交わす習慣はタンザニアだけでなく、アジアの国でも英語圏の国でも、目が合えば知らない人とも微笑み合ったり、軽い挨拶を交わす文化を持つ国はいくつもあります。
日本の他、中国、韓国など東アジアではそのような習慣はないようですが、軽く笑顔や挨拶を交し合うのは気分がよいものです。
こちらも自然に返せるといいですね。
タンザニアのちょっと面白い点は、挨拶はきちんとするけれども別に笑顔でなくてもよいところです。
わざわざ挨拶してくれる割に、顔は仏頂面だったりします。
下心が感じられず、それも悪くありません。
左手の使用はご法度
インドやアラブ諸国など、左手は「不浄の手」と考える文化圏があります。
タンザニアもその一つで、左手でモノの受け渡しはダメです。
もちろん、左手での握手も考えられません。
うっかり左手を出してしまうことのないよう、外国人と交流する際は知識として知っておきましょう。
上下関係ははっきり
日本でもかつては上下関係が厳しかったものです。
学校や部活で、先輩・後輩間の厳しい区別を体験したことがある人もいるのではないでしょうか。
けれど最近ではそのような傾向は緩まりつつあり、親子間でも「友達のような」関係が理想といわれたりもするくらいです。
同時に、年配者を敬うという意識も薄れて来ています。
しかしながら、タンザニアでは年長者は敬われなければなりません。
タンザニアの言語・スワヒリ語の挨拶「Jambo(ジャンボ)」はよく知られていますが、年上の人にはその挨拶は使われません。
年長者には「Shikamoo(シカモー)」という専用の挨拶をします。
それに対し、年長者からは「Marahaba(マラハバ)」という返答が返ってきます。
「上下関係ははっきりしている」といっても、これもまた私たちが考える関係とは少し様相が異なります。
日本の文化では、心理的に距離をおくことで敬意を示すという姿勢があります。
つまり、年長者に話しかけるときは同世代の人と話すように気安く声をかけることはせず、慎重になるということです。
けれども、タンザニアの場合、敬意を示すことと心の距離感は関係ないようです。
年長者とも気さくに冗談を言い合ったりして、家族のようにおしゃべりします。
人と人の距離が短く、友達になるのも早いのです。
例えば、新入社員でもタンザニア人同士はたちまち兄弟姉妹や家族のように親しく話すようになるので、こちらからすると「もしかして、前から知り合いだったの?」と思わされるほどです。
もちろん、そうではないのですが。
日本人同士だと、少なくともしばらくは敬語を使い合いますし、職場とプライベートで関係も区別されますよね。
玄関で靴は脱ぎます
家の中で靴を脱ぐという習慣は日本独特のものと考える人は少なくありません。
しかし、日本の玄関のように段差を設けてまで厳密にウチとソトを分けないとしても、玄関先で靴を脱ぐ習慣を持つ国は世界に複数あります。
そして、タンザニアもその一つです。
家では玄関先で靴を脱ぎます。
ただし、スリッパのような室内履きは使いません。
家事と庭仕事は人に任せる
日本でも最近は、必要に応じて部分的に家事をお願い出来るサービスが広まりつつあるようですが、それでも家でお手伝いさんを雇うというのは現実的ではありません。
しかし、タンザニアではお手伝いさんはどこの家庭にもいるものです。
そしてそれは、決して裕福な家庭だけの習慣ではありません。
収入レベルにより、お手伝いさんへの報酬額も期待される仕事のレベルも異なるにせよ、どこの家でもお手伝いさんを使います。
通いで働いている場合もあれば、住み込みのケースもあります。
また面白い点は、お手伝いさんの家でもお手伝いさんを使っていることです。
小さい子供がいる家庭でもお手伝いさんがいてくれるからこそ、自分も他の家に働きに行けるという仕組みです。
いわば「ワークシェアリング」と考えれば納得いくのではないでしょうか。
以前は、地方の親戚が都会に出てきて仕事探しをする間、自宅に住まわせる代わりに家事をしてもらうといったケースや、地方の親戚の子供を都会の自宅に預かって手伝いをさせるといった状況もありました。
しかし昨今では、タンザニアでも子供は義務教育を受けるのが常識です。
少なくともダルエスサラームでは、家事手伝いに学校年齢の子供を使うという形態は見られなくなりました。
家事だけでなく、庭仕事も例外ではありません。
居住者が自分の手で、自分の庭の芝刈りや手入れをすることはまずありません。
「裕福」といわれるレベルでなくても同じです。
必ず、庭仕事を生業にしている人を頼みます。
もし「裕福」でないのだとしたら、生活レベルに応じた金額を請求されるでしょう。
住んでいる地区によって相場は違います。
食事前の手洗いはラクに済ませる
「食事前に手を洗う」は日本でも常識ですが、タンザニアでは手を洗うために、食卓に水を入れたジャグと水を受け止めるボウルが運ばれて来ます。席を立ってシンクに行かなくても、座ったまま手を洗わせてくれるというわけです。
タンザニア式レストランでは、ウェイターが手に水をかけてくれます。
家庭ではダイニングルームの隅にシンクが設置されている作りも多いです。
結婚式の祝儀は事前徴収
「地味婚」という言葉が流行ってからすでにだいぶ経ちますが、バブル時代と呼ばれた頃、日本の結婚式は派手さが競われたものです。
そんな過去が思い起こされるほど、タンザニアの結婚式は派手です。
参列する仲良したちはお揃いのドレスをあつらえて式を盛り上げます。
また、結婚式本番とは別に、盛大な打ち上げパーティが行われ、結婚式当日は式に続いて夜半過ぎまで披露宴が盛り上がります。
祝儀の受け渡し方法は独特です。
招待状が届いたら招待状に書かれている指定の日までに「社会的立場や本人との関係」に見合った金額を取りまとめ役の人に支払います。
そして、もし招待状に「6時から開始」と書いてあったら、実際の始まりは8時、9時と考えて間違いないでしょう。
6時に会場に行ったら、きっとまだ何の準備も出来ていないはずです。
時間通りに始める気はさらさらないのに、6時と書く意味を理解するのは困難です。
タンザニア人は誰もがそれを暗黙のうちに受け止めており、8時、9時になると揃って集まり出すのもまた不思議なものです。
まとめ
以上、タンザニアの暮らしにおける主なマナーと習慣をご紹介しました。
タンザニアを訪れる機会があったら、街を歩けばすぐタンザニア式挨拶習慣を体験出来るでしょうし、人に対して左手は使われないことにも気付くでしょう。
タンザニア式レストランにいけば、座席での手洗いを経験出来ますし、人のお宅を訪ねる機会があれば、海外での靴脱ぎ習慣を体験出来ます。
ぜひ、この記事を参考にして一度タンザニアに行く機会があれば体験してみてください。・
投稿者プロフィール
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2012年より東アフリカの英語圏の国・タンザニア在住。英語は貿易業務、国際機関勤務などにおいて、実務で身に付けた叩き上げ。
現在はフリーライターとして、日本語および英語による記事を執筆している。
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